「木の家は地震に弱いのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、鉄やコンクリートと比較しても、建材としての木材は一定の強度と柔軟性を備えており、必ずしも劣るわけではありません。
「木は弱い」「コンクリートは強い」といった先入観にとらわれず、正しい知識に基づいて家づくりを検討してみましょう。
素材の強さを示す指標の1つに「比強度」があります。比強度とは、同じ重さに対する強さ(たとえば素材1kgに対する強さ)を示す指標です。
家づくりに使用される主な素材には、木材・鉄・コンクリートの3種類がありますが、これら3種類のうち比強度の最も高い素材が木材。各素材の比強度は、具体的に次のような数値となります。
建材 | 引っ張り強度 | 圧縮強度 | 曲げ強度 |
---|---|---|---|
木材 | 2,250 | 950 | 2,800 |
鉄 | 509 | 445 | 182 |
コンクリート | 10 | 100 | 7 |
(単位:kg/cm2)
引っ張り強度、圧縮強度、曲げ強度のいずれも木材が圧倒的に高いことが分かります。「木の家は地震に弱いのでは?」というイメージは、決して正しくありません。
※参照元:森林・林業学習館(https://www.shinrin-ringyou.com/mokuzai/kyoudo.php)
住宅の性能表示に関して定める品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、地震に対する建物の強さを表す指標として「耐震等級」という基準が設定されています。
品確法で定められている耐震等級は1~3の段階。数字が高いほど、耐震性能が高くなります。
耐震等級1~3のそれぞれの定義・概要を確認してみましょう。
建築基準法で定められている最低限の耐震性能を示す基準。いわゆる「新耐震基準」と呼ばれるものです。
強さの目安は、数百年に1度程度の地震(震度6~7程度)において、住宅が倒壊・崩壊しない程度。また、数十年に1度程度の地震(震度5程度)において、住宅が損傷しない程度となります。
注意したい点が、仮に震度6~7程度の地震が発生した場合、住宅は倒壊・崩壊しないものの、損傷する恐れはあるということ。損傷の程度によっては、補修や建て替えが必要となる場合もあります。
「耐震等級1」の1.25倍の強度となる耐震性能を示す基準。近年、新築注文住宅で広く見られる「長期優良住宅」について、その認定を受けるためには耐震等級2以上であることが条件の1つとされています。
なお、地震発生時における避難所として指定される公共施設(学校など)は、耐震等級2以上であることが必須条件とされています。
「耐震等級1」の1.5倍の強度となる耐震性能を示す基準。品確法における住宅性能表示において、もっとも高いレベルの耐震性能となります。
2016年4月に発生した熊本地震では、震度7の揺れが立て続けに2度発生しました。その際、1度目の地震には耐えたものの2度目の地震で倒壊した住宅も多かった中、耐震等級3の住宅は2度目の揺れにも耐えたことが調査により明らかになっています。
なお、地震発生時において救護・復興拠点となる消防署や警察署の多くは、耐震等級3で設計されています。将来の大規模地震の発生が懸念されている現在、耐震等級3に対応した注文住宅や建売住宅を選択する傾向が高まり、実際に多く見られるようになっています。
熊本地震では、多くの木造住宅が倒壊しました。特に、連続して発生した2度目の地震によって倒壊に至ったケースが多かったと報告されています。1度目、2度目ともに非常に強い揺れであったにもかかわらず、2度目の地震での倒壊が目立った主な理由は、最初の揺れで柱や梁、壁を支える金物や筋交いに破損や緩みが生じ、構造上の接合部に不具合が生じていたことによると考えられています。
熊本地震や東日本大震災のように、大規模な地震は複数回続けて発生する可能性があります。こうした繰り返しの揺れにも耐えうる住宅を実現するためには、接合部の強化に加え、制振ダンパーの設置など、複層的な耐震対策を講じることが重要です。
比強度の観点では、木はコンクリートや鉄よりも圧倒的に高い強度を持ちます。そのため、「木の家だと地震が不安」という一般的なイメージは、必ずしも正しくはありません。耐震等級の高い設計を採用することで、木の家でも十分に高い耐震性能を実現することができます。
ただし、耐震性能ばかりに注目するあまり、自然な採光や風通しといった快適性が損なわれてしまっては、暮らしやすさを確保できない可能性があります。家づくりにおいて耐震性の確保は重要ですが、当サイトでは、快適な生活環境とのバランスにも配慮した住宅設計を推奨しています。